底抜けに明るいロードムービーのような本でした。
この本を知ったHONZのレビューはこちら。
『ゼロからトースターを作ってみた』 青銅器時代からの文明をめぐる旅 – HONZ
学生時代にやっていたしゃべり場みたいな活動のとある会で、
モノの直し方がわからなくなったという質問をしたことだけをふとした時思い出す。
すると、子どもの頃、びろんびろんになったビデオテープを父と一緒に分解して、
どうやったら戻せるだろうと一生懸命考えていじくりまわしたのに結局戻せなくて、
元には収まるのだけど、折れたフィルムは微妙な隙間を生んでうまく回らないんだな。それで落ち込んだ。
という記憶も付いてくるのです。
前に出した道具と機械の本は、多分その頃には持っていて、
分解すれば仕組みが分かって元に戻せると思っていたし、ビデオテープ以外のものはそこそこ直せていたんじゃないかと思う。
ミニ四駆や、レゴや、ちょっとした基盤がついた何か。
壊れやすいけれど、直す事も出来なくは無いものが僕の子どもの頃にはまだあった。
で、いつしかそれも無くなって、当然利便性は段違いなんだけど、どこか寂しい気もしていた。
寂しさが冒頭の質問を投げかけるきっかけだったと思う。
『ゼロからトースターを作ってみた』は、分解どころじゃなくて、
原料からモノを作り出す過程を描き出した本だ。
もうめちゃくちゃ面白い。
なんで思いつかなかったんだろう。分解なんてスタートラインだった。
下の写真のように分解されたトースターの部品は、すでに鉄や銅線やプラスチックカバーといった製品の集合体である。
著者のトーマス・トウェイツさんは、この鉄やプラスチックを原料を採取する所から始めて製品づくりに挑んだ突き抜けた人だ。
軽やかに冒険が綴られていて、あっという間に読めます。
一から何かを作るってのは、こういうことさと、ずががんと突きつけられるすごい本です。