溢れ出す山賊オーラを感じ取って頂いたようで、
合鴨農法で用いていた鴨を捌く機会にお誘い頂き、
捌いた一羽を買って持ち帰って参りました。
昨今、WEB記事や山賊ダイアリー、銀の匙などで、狩猟・屠殺について見る機会が多く、
好奇心としてやってみたいなあと思う事があった。
美味しい合鴨の燻製をときたま頂くけれど、鴨肉ってブロック上の形しか見た事が無い。
例えば一羽からどのくらい肉がとれるのだろう。
砂肝の中には砂が入っているのか。
触らないとわからんなあとは思うけど、自分で獲るのには高いハードルと手続きがある。
この度の機会はとてもタイミングがよかった。興味はあるけれど、一人じゃできませんから。
誘って頂いた方はもちろん、貴重で思い入れのある合鴨を用意し、
指導・提供してくださった農場の方にはこの記事をもって御礼させて頂きたい。
本当にありがとうございます。
身も蓋もない話ですが、僕は命の重さとかはあまり考えていない。
合鴨なり、動物の命を頂いて、食肉に加工していく全体のプロセスに興味があった。
忘れないよう、しっかり残したいのでこうして記事にします。
ここから掲載する写真はまあ、見る人によってはちょっと見たく無いものが写っているかもしれない。
合鴨を吊るして血抜き、羽毛をむしり、捌くという過程を載せています。
見たからって何がどうなるもんでも無いと思いますが、自己責任でどうぞ。
苦手だなあというかたは是非他のサイトへ。
いきなり表示されないように少し間を空けておきます。
捌く事自体は出来ると思っていたけれど、不安なのは内蔵系に触れるかだった。
事前に見ていた解体のプロセスの中では、絞めるときと内蔵の処理が生理的に苦手な印象だった。
解体の方法はいくつかあるそうで、教えて頂いた農場の方も勉強中だと仰っていた。
そんなわけでここから掲載するやり方は一例だと思ってほしい。
特に、初心者に体験させるためのやり方であると思う。
農場に到着後、すぐに始まった。迷う暇もない感じで実にありがたかった。
まずは抑え、吊るす為のひもで足を縛る。
合鴨の大きさってのも体感したことがなかった。至近距離で羽を広げるとかなり大きかった。
早速だが、首もとを数cm切って吊るす。
出血は想像していたより少ない。絶命まで5分程あったと思う。少しバタバタ動いた。
血抜きして落ち着いた合鴨にお湯をかける。
そのまま羽毛をむしることも当然できるが、お湯をかけて毛穴が開くと抜きやすくなるんだそうだ。
お湯をかけなくても合鴨はまだ暖かい。
手を合わせて先に進む。
数人の手でどんどんむしった。
一人が足を持ち、毛の方向に逆らって抜いて行く。
ふわっとした毛、羽ばたくための長く丈夫な羽。一心不乱にどんどんむしるがなかなか終わらなかった。
合鴨の皮が見えて来て、思わずああ鶏皮だと思った。
奥では同時進行で鶏の羽毛をむしる。
合鴨と鶏では、羽毛が全く違う。合鴨は水鳥だから、なんというかつやつやしていた。
このくらいで15分くらい経ったのではないか。
自分の中で、食肉と生き物の境界線は羽毛で区切られている事が分かった。
羽毛が取れて来た合鴨を見ていると大分「食べ物」としての肉に見えた。
まだまだ羽毛をむしらないと食べられない。
首から上と、お尻まわりを除く部位は徹底的にむしる。
羽毛は抜けても、芯のようなものが残ってしまうと、触感に影響するそうだ。
当然皮を剥いで調理すれば問題無いが、合鴨の皮はこの時点で美味しそうだなと思えたので、どんどんむしる。
むしりづらくなったらお湯をかけた。
そろそろもう一羽をということで、次の合鴨は首を抜くやり方に挑戦。
一緒に体験した友人男の力でもなかなか抜けず、結局一羽目と同じ首を切る方法に。
1羽目の合鴨の羽毛処理が終わり、2羽目の合鴨の血抜きが進む頃、同時進行の鶏が捌かれ始めた。
鶏は、毛と一緒に皮も剥けてしまったそうで、あっという間に見慣れた肉の形になっていった。
大雑把な分類だろうけれど、今回切り分けられた部位は、
手羽〜胸。もも。ささみ。砂肝、心臓、肝臓。がら。
鶏がおわり、いよいよ僕の頂く合鴨を捌く。
例えば右足で先生が手本を見せてくれて、僕が左足で真似て捌くやり方で進んだ。
まずは足を切った。
股関節を探し、内蔵を傷つけないように気をつけながら、皮に切れ目を入れて行く。
少しずつ身を切り開いて行き、関節の付け根を切り落とすともも肉が取れる。
次に胸から手羽。
足と同じように肩の付け根をぐるっと切り開き、最後はむしるように大きくつかんで引っ張ると、胸肉が付いて来た。
比較はしていないが鶏よりもかなり大きな肉がとれた。皮もしっかり乗り、脂がたっぷりとついていた。
肉の色は綺麗に赤黒く、そういえば血はほとんど出ていない。
胸肉を取った後、骨に残った部分がささみ。
少し筋を切りながらこそいでいくと、お肉屋さんで見かけるささみの形で、左右一本ずつ取れる。
鶏のささみはピンク色のイメージだが、合鴨は胸やももと同様赤黒かった。
生でも食べれるらしいが、そこはいつか山賊になったら考える事にする。
主要な部位をとったので、内蔵を処理する。
残していた首もこの時点で切り落とす。思わず手を合わせた。
先ほど取った肩の付け根、肩甲骨のような部分に切れ目をいれ、
手がかりとして引っぱりあげると大きく胸がひらき、内蔵が露出する。
食道・気道から肺、心臓、肝臓、砂肝、腸などが見えてくる。
崩さないように慎重に、使えるものを取り出す。今回は心臓、砂肝、肝臓を取り出した。その他は危ないそうだ。
肝臓を横から切り開く。
初めて見る肝臓は、まるで貝のような光沢につつまれていた。大きさは鶏の卵かすこし大きい程度。
切り開くと未消化の餌がじゃりじゃりのものと一緒にはいっていた。取り除き、洗い流すとよく見る砂肝の形になった。
こちらはガラ。肉がまだ大分付いている。良い出汁が出るだろう。
とういわけで、捌いた結果こうなった。
左上がガラ。左下から、ささみ・胸と手羽・もも・内蔵。
すべてパックに詰めて持ち帰った。
家でささみとももを少し、軽く焼いて食べた。すごく美味しかった。
やっぱり命の重みとか言われてもピンとは来ない。
魚はいいのになんで合鴨はだめなの?ってのはよくわからん。
一緒に参加した東京からの人が命どうこうの話をしていたけれど、その人は捌かないで終わったわけで。
あんまり考えすぎてもいかんなーとも思うが、
もう一度捌きたいと思ったのは間違いない。ありがとうございました。
合鴨にも感謝。美味しく頂くからね。