Vanishing Act

とある学生時代リーガエスパニョーラを生で見たくて契約したWOWOWをダラダラ見ていた。
暗黒バルサを救世主ロナウジーニョが救っていた頃。
多分深夜だったんじゃないかな。早朝だったかもしれない。
ウトウトしながらライブ映像をぼんやり見ていたら、どうやらフジロックの映像だったか、
ピアノの音が聞こえて来て、ピアノいいねえとブラウン管の図体だけでかいテレビに目をやった。

どわーっとフジロックフェスティバルの大観衆の前、デカいステージ。
グランドピアノが一つ。
人間はおっさんが一人。

フジロックってそういうのもありなんだと、まだぼんやりしていたのだけど、
ピアノからはわずかな音だけが聞こえ、囁くような声が力強くステージから世界へ拡がって行く様に、
すっかり目が覚めて見入ってしまった。

その日のステージのトリを飾ったらしいその人のライブはもう格好良く、
ダメな生活を送る学生の身の隅々まで行き渡るような声にやられてしまい、
そうはいってもぼんやりとしか見ていなかったから名前も曲名もわからぬこの歌をもう一度聞く為に
2chやらなんやらで質問しては検索して、ようやく分かったのがVanishing Act。
Lou Reedという超渋いおっさんの曲だった。

Velvet Undergroundというすごいバンドにいたとか、
アメリカのロックの歴史を変えたすごい人だとか聞きましたがその辺は全く分からない。
ただただ、ただただ、Vanishing Actという曲に惚れ込んでしまった。

何枚かのアルバムに収録されていたけれど、フジロックのライブに最も近いと(2chで)教えてもらったのは
Animal selenadeのバージョンで、どこかでのライブ盤。

追い求めていた曲を聞くときというのはなんともしあわせなもので、
物悲しい歌を俺は嬉々として聞いていた。一日中聞いていた。
良い日も悪い日もVanishing Actばかりだったな。
一人で聞くのに丁度よかった。静かな時間を満たしてくれた。
一人で本を読みながら酒飲んでヘッドフォンして聞くのは格別だった。

今でもしょっちゅう聞いている。穏やかな曲で、
最後の力強さがとても気に入っている。
聞けば聞く程何か違う印象がある。
Animal Selenadeはライブ版で、前奏で観客がキャーキャー言ってるが、それすら好きになった。
人生で一番聴いた曲を選べと言われたら多分一番だ。
Vanishing Act以外の曲は殆ど聴いていないのは、申し訳ない。

20131023_0007

Lou Reedさんが昨日、71歳で亡くなったそうです。
偶然で、あの日ぼんやりテレビを見ていなかったら知らないままだったろう。
本当にこの歌と出会えて良かった。
あんまりこういうのを残す柄じゃないが、今夜は書かずにはいられなかった。

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